十二月三十一日、大晦日の夜。
家族四人ですき焼きを囲んでいた。鍋に残っていた最後の黒毛和牛を取ろうと箸を伸ばすと、母が先に肉をつまみ、弟の翔太の器に入れた。私の器には、代わりに白菜が盛られた。
「翔太は仕事で疲れてるんだから、しっかり食べなさい。紗季は野菜でいいでしょ。ダイエット中なんだから」
伸ばしかけた箸を引っ込め、白菜を口に運んだ。
昔から、家で何かいいものを買うと、真っ先に翔太のものになった。父も、祖父から受け継いだ家は将来翔太に継がせるつもりで、家のお金は跡取りのために使うべきだと言っていた。
翔太は得意げに肉をつまみ上げた。
「ありがと、母さん。やっぱ俺には甘いよな」
テーブルに置いていたスマホが震えた。
【家族によるえこひいき行為を検知しました】
【報酬:100,000円】
銀行アプリを開くと、口座に十万円が振り込まれていた。何かの間違いかと画面を見直していると、頭の中に機械的な声が響いた。
【えこひいき報酬システムとの接続が完了しました】
【家族による新たなえこひいき行為が発生するたび、報酬が支払われます。同一の行為は重複して計上されません】
母は私に食卓の片づけを急かし、翔太はさっさと箸を置いて部屋に戻ろうとしていた。
口座の残高を見ているうちに、思わず笑みがこぼれた。
そこまで翔太をひいきしたいなら、好きなだけすればいい。その分、こっちはしっかり貯金させてもらおう。