竜人や獣人、エルフやドワーフなどの亜人族と人族が共存して暮らしている、ゼシール王国。
といっても、同じ町や王都に住んでいるだけで、居住区は別々。それは、人族と亜人族を護るために必要なことなの。
亜人族には番が存在するからね。
昔は、夫婦だろうが、子供だろうが、平気で人族を拉致して無理矢理番にしていたって話よ。完全に誘拐だよね。犯罪だよ犯罪。ほんと怖い。今は、そんなことしたら法律で罰せられるからないけどね。
その代わりと言っていいのかな、年に一度、合法的に拉致できる日がある。
それが、愛の女神レシーナ様の生誕の日――
亜人族と人族の居住区の境にある中央区で行われる、神聖な儀式。
番を求める亜人族と年頃の人族が集まるの。結構な人数だよ。簡単に言えば、集団お見合いかな。選ばれれば、一生、優雅な暮らしがおくれるからね、皆気合い入りまくってる。私は全然興味ないけど。
この日ばかりは、食堂はお休み。これ幸いと店を大掃除していたら、ドアをノックする音が。激しくなく、普通だったから、ついドアを開けてしまった、おマヌケな私。
するとそこには、亜人族の男が片膝を付いて、私に女神が愛する白百合の花を捧げていた。
「やっと出会えた……私の運命の番。さぁ、私たちの屋敷に一緒に帰ろう」
たった六歳の少女に求婚してきたのは、狼獣人の白銀の守護者様。
その日から、選択を間違えれば即監禁というデスゲームが始まった。
なんとしても、絶対、回避するわよ!! だって、私にはどうしても叶えたい夢があるんだから!!
〈この作品はアルファポリスにも掲載しています〉