強さは筋肉の太さでも、魔力の多さでもない。
“どこをどう繋げるか”だ。
王都測量局で地味に働いていたノエルは、貴族のご子息を持ち上げなかったせいで“役立たず”の烙印と共に追放された。彼の固有技能《地図編集》は、見た目にはただのペンと紙。だが、描線は“地の脈”と共鳴し、点は“資源の芽”となる。
行き着いた辺境には、誰も制御できないダンジョン。“湧いて出る”魔物と、“湧いて消える”金。
ノエルはまず道を引いた。戦線と生活路を分離する一本。給水線と排水路を“二重線”で囲う。湧出点の周囲に“検問アイコン”を置き、警備動線を短縮。食料は? “農地タイル”を段丘状に配置して日照を最適化。
ただの地図遊びに見える作業が、翌朝には現実になっている──ダンジョン前に並ぶ露店、渋滞しない荷車列、夜も安全な灯りの縦列。
元上司は言う。「地図で飯は食えん」
では見せてやろう。地図で国を食わせる方法を。
魔物の“湧き”は脅威ではなく、安定供給の“鉱脈”。危険区画は“立入禁止ハッチング”で封じ、討伐隊は“周回ルート”で疲労ゼロ。治安は“見回りピン”で可視化、雇用は“工房アイコン”で創出。
辺境は今、都市になる。
そして、王都からは“収奪の徴税路”が伸びてくる。
――上等だ。線の引き方で、すべてを逆流させる。
誰もが見落としていた“弱いスキル”の本質で、世界の配線を書き換える。爽快だけど働き者、静かだけど痛烈なざまぁ。読むうちあなたも、地図に線を引きたくなる。
登場人物(主要)
ノエル:元・王都測量局雑務。固有《地図編集》。温厚だが線を引く時だけ性格が黒い。
ミィナ:辺境村の鍛冶兼ギルド受付。現場最強の“段取り”担当。
ルカ:元迷宮案内人の少年。危険嗅覚が鋭いスカウト。
エセル:王都の実利派貴族令嬢。初期アンチ→中盤同盟。
ガルド:ダンジョン生態に魅せられた獣人学者。資源化の理屈要員。
パルド局長/ギーゼ伯:旧職場と王都側の搾取コンボ。“断罪回”の的。