前世でイラストーレターだった溝田悠一は、仕事疲れで催した欲情を自分が作画したキャラクターで発散してしまった。 　事後処理に立ち上がった拍子に足がもつれて座卓の角に頭をぶつけて事切れる。 　そして、気づけば原生林の湖畔で赤子の姿となっていた。 　よくよく見れば、この赤子、角やら翼があって人間ではない。 　ファンタジーな世界の住人として転生した悠一は、幸運にも生まれ持った超常の力を使って生き延びてゆく。 　ときに人々と交流し、ときに権力者から命を狙われ、それでも悠一は人とふれあう。 　覇道を求めるのは柄ではない。隠者になるには人恋しい。 　前世と今世、二つの自分を成り立たせるために、一人の転生者は心の旅路を往く――。