辺境の村に住むリアムは一見、しがない壮年期の交易商人。 　かつて、ある組織に拉致され実験兵士に仕立て上げられた過去を持つ彼は、厄介な資質を抱えていた。 　それは、埋め込まれた呪縛の臓器や洗脳実験が理由ではない、生まれ出た時よりの天分。 『九死一生』という、悲運の中の一抹の幸運である。 　所謂、"不幸中の幸い"が、彼の人生には過剰に降りかかるのだ。 　今日まで彼は生き延びることは出来たものの、多くのものを失ってきた。 　自我が崩壊してしまうほどの追憶を封印し、"ただの人"としてようやくぼちぼちと交易商人を営めるようになったおっさんを、宿命は非情かつ蓋然的に 　巨大な時代のうねり、そして、歴史の真実へと、勝手に飲み込んでいく――――

エーン・ソーフ　再生紀:999年（ên sôph：A.R. 999） ＜邪神島＞の忌み名で呼ばれるアサーザッド列島には現在、１３の国が存在する。 『破片戦争』という永劫終わらない、人類同士の呪われた戦乱の中で サシーア共和国は＜虚無の黒海＞から突如侵攻してきた魔族との戦いを余儀なくされる。 絶望的な戦況で、『死傷率５０％の部隊』と揶揄される 陸防軍第１軍・第３歩兵大隊・第１１中隊に所属するセーザルの視点から サシーア共和国滅亡までの道程を描く。 ※「ド田舎おっさん商人は、流れるがまま世界を変える」 https://ncode.syosetu.com/n7621he/ の外伝作品となります。短期連載を予定。