少しだけ未来のお話。 どのＶＲゲームにも「トッププレイヤー」と呼ばれる者たちがいる。それはこの『Thine Owen Odyssey』においても同じことだ。光り輝く剣を以って全てを消し去る者、自ら従えるモンスターで敵を蹂躙する者、聖なる御技によって死者すらも蘇らせる者──。 そんな「最強」の中に、とりわけ特異なプレイヤーがいた。彼女の行使する魔法はいわば全てが「オリジナル」。時と場、そして敵に応じて紡がれる古の詠唱は言葉の数だけ存在し、誰一人としてその意味を理解することはできない──彼女の攻撃を自らの身で受ける以外では。 けれども彼女とて最初は一人の「二陣プレイヤー」でしかなく、目指していたのも普通の「陰陽師」だった。悪戦苦闘、四苦八苦、情報の少なさに頭をかかえながら彼女は知らず知らずのうちに道を逸れていき、最後の選択が彼女を「最強」たらしめたのだ。 これは古典に深く精通した少女が膨大な知識によって詠唱を紡ぎ、最も優れた魔法使いの一人となるまでの道程と、そしてなった後の偉大なる活躍を語った物語。 ―――――――――― 目下、古文と漢文で綺麗な詠唱を作ろうと奮闘中。 週に２話は出せるように努力します。

二月十四日。蒼嶋透希は図書委員の後輩からチョコレートを受け取る。普段の接し方ゆえに「変な先輩」と思われているのではないかと恐れていた彼は、少なくともチョコレートを贈る価値があるくらいには尊敬されているのだということが分かり、ふっと安堵で胸を撫で下ろした。 しかし、僕にも作ってくれてありがとう、と言った彼の言葉を後輩の女の子は否定して……？ ────────── バレンタインの熱に駆られて二日で書いたものです。推敲も不十分であるけれど、それでも彼と彼女のことを描きたかった。 ……いつか二人のことをより綺麗に描いたものをどこかに出すかもしれません。