人気作家の安河内蓮は、急遽、変更した待ち合わせ場所で——世界遺産宮島の厳島神社のほど近くにあるホテルのロビーで、芸能レポーターの近藤結花と偶然、顔見知りになる。 　そこで安河内蓮は、ロビーに設えてあるテレビの画面に映し出されている女性が、自分の住んでいるマンションの隣人が、実は人気女優だったと教えられる。ある番組以外一切テレビを視聴しない蓮はそれまで、隣人の正体を知らなかったのだ。 　そこで初めて隣人の正体を知った蓮は、「彼女には男がいるわ」と結花に教える。ひそかに、ほくそ笑む結花。だがーー。 　それが導火線となって、近藤結花は殺害されてしまう。 　彼女が殺害されたのは、自分のせいだーー蓮は罪悪感に苛まれる。 「わたしには彼女の無念を晴らす理由があるわ」 　立ち上がる、安河内蓮。 　はたして、その犯人とはーー。その結末や、いかに！

オリジナルの桃太郎のおとぎ話では、ある山里の村に、おじいさんとおばあさんがすんでいることになっている。 それからまた、おばあさんが川で洗濯しているとき、川上から、なんとも大きな桃が流れてきて、それを拾って家に持ち帰った、というふうにも。 でもこの物語では、その肝心のおばあさんが、川で洗濯していないのである。 そこにいるはずの人がいなかったことで起こる、もうひとつの物語ーーこれは、まさにそうした物語である。 それと、この物語では桃太郎が、なんと、三人もいるのである。 どうして、桃太郎は三人も？ ともあれ、その三人の桃太郎が織りなす、もうひとつの、桃太郎伝説。 はたして、その結末や、いかに⁈

夏祭りで買ってもらった赤い風船。 なぜかその手をするりと抜けて、やがて、青い空に消えてしまった。 涙にくれる幼子。 「泣かないの。あとでいいことあるから」 そういって、お母さんがなぐさめる。 そして、後日ーー。

あなたはもし、一度だけ過去に戻れるとしたら、何歳のときの、どんな場面がいい？ それとも、もう二度と過去など振り返りたくはない？ これは、そんなお話。

「そもそも、幽霊は夏ってきめつけていること自体が、おかしいんだ」 カツユキが、そう主張するのに対して、イサムがこう切り返す。 「どうしてだよ、幽霊は夏っていうのが通説だろうよ」 「だから、そうとはかぎらないんだってば」 「なんだよ、おまえ。さっきからつべこべうるさいなあ。そこまで言い切るなら、たしかめに行こうぜ。おまえの言ってることが正しいかどうか」 「え、どこに？」 「うちの学校の理科室にさ。そこに、でるらしいって噂だからな」 「い、今から？」 「なに、馬鹿なこと言ってんだ。夜だよ、夜にきまってんだろう。それもさ、もっとも幽霊がでやすいとされる丑三つ時にな」 そういうわけで、カツユキは草木も眠る、丑三つ時に、小学校の理科室に行く羽目にーー。 そうして、聞こえてくる、「だれか、たすけて」という、不気味な声。 どこからだ。 「あそこにあるラジオからじゃない」 そうみたい。それも、真っ赤なラジオ。 はたして、それは、異界からの声なのだろうか。それとも……。

小さな亡骸の傍らで、慟哭する女。 その女の側で天に向かって、この現実の救いのなさを訴える男。 そして、この物語は、はじまる。

不肖ながら、ぶんぺいが、不定期で、時事、政治、文化、スポーツ、男と女　その他諸々　私見ふんだんに、きまぐれにぼやきまくります。 尚、ぼやきについては、あくまでも個人的な見解です。従って、けっして、正論ではないので、その点はご了承下さい。

日常の何気ない風景を、ぼくなりの視点の高さと体温で切り取って、それを原稿用紙いちまい分くらいの物語に紡いでみました。 ちなみに、あらかたが新聞に掲載された作品の、その改稿版です。

小学生のぼくーー母子家庭で育ったユキオは、今年六年生になる。ユキオは、ばあちゃんっ子。 ただ、「ばあちゃんは、父さんのお母さん。つまり、ぼくの母さんとは血が繋がっていない。 父さんが亡くなり、もともと赤の他人だったのがもっと赤の他人になってしまった二人は、微妙な、だからいつ縁が切れてもおかしくない、当時、そんな関係だった」（文中より）という。 そんなユキオは、六年生に進級すると、クラスのみんなからシカトされるようになり、ボッチの淋しい学園生活を送る羽目に。 けれど、ある日、ばあちゃんから「やまない雨は、ない」ということばを聞いたユキオは、このままではダメだと、一念発起する。 が、好事魔多しである。そのばあちゃんが、ある日突然、やまいで倒れてしまうのだ。 しかしそれが、いっそう、ユキオを奮い立たせることになるから、人生は皮肉である。 ユキオは、卒業式に、クラスのみんなに一矢を報いようと、決意するのだ。 そして、いよいよ、その卒業式の日。 はたして、その結末やいかにーー。

ある晩、卒然として左下の奥歯が疼き出す。歯医者での診断は、もちろん、虫歯。 これはけれど、食後に歯磨きを欠かさないぼくにすれば、まさに青天の霹靂。 というわけで、それにまつわる話が展開されてゆく。 エッセイ風、フィクションーー。

ある猿の国の善意に満ち溢れた王様。 ある晩、井戸に月が落ちたということで、善意があるだけに、その月を拾おうとして、国中の猿を集める。 だがーー。

ゲラゲラコンテスト３の応募作品、漫才です。

よしだぶんぺいのショートショート　vol.1 5000字以内の短編。 ジャンルは、etc……。 無聊のなぐさめに、おひとついかが。

ショートショート　折り句 第一話　　ふ・る・さ・と 自分とは、いったい、何者か？ その答えを探しに旅に出た、ぼく。 はたして、その答えとは……。 第二話

山あいのひなびた町に、ひっそり閑（かん）とたたずむ、ささやかな駅舎。 ホームにぱらぱら見えていた人影が、最終列車に飲み込まれてゆく。 もの悲しい汽笛が霜（しも）について響くせいか、凛（りん）々として、凩（こがらし）のようにも耳にとまる。 煙突から、もくもくと吐き出される煤煙（ばいえん）。それが、霜とひとつになって闇にとけてゆく。 やがて、列車は、汽笛の余韻（よいん）をわびしくホームに残し、黒（こく）洞（とうとう）々たる闇の中へ消え去った。

◇真美が東京に来て、もうすぐ七度目の春を迎えようとしていた。 彼氏の周と付き合い始めて六度目の春でもある。 それは、お互いがそれぞれの日々に追われ、少しずつ時間のすれ違いが生じる季節。 そして、『好き』だという感情は変わってないのに、何かがちぐはぐになる季節でもある。 時間のすれ違いーーそんな理由で別れてしまう恋人たちがいる。 だが、それは『好き』だという感情だけで解消できると信じていた真美。 ところが、自分がその状況に置かれて、そこで思い知らされる。 『好き』だという感情だけでは、どうにもならないことがあるのだと。 そんな真美と周の恋愛話を通じ、「男と女」、「母と娘」、「大都市と地方」、「家と個人」。 それぞれの光と影を縒り、一本の糸に紡いでみました。

夕さりのブロック塀の上で、三毛がボヤくーー。