目を数度擦るが、景色は変わらない。
それどころかはっきりしていく。
上には雲一つない晴天。
僕は草原に寝ていた。
「あれ...ど、どこだよ!ここはー!?」
記憶を振り返るために僕は目を閉じる。
カリムシア王国首都パルディナ。
昨日は、1999年終わりの日。
今日は記念式典の行われる2000年の初めの日だ。
そして昨日は寒い中外に出て...
「あの子のせいか?」
ふと思い出したのは、昨日歩いている時に腰ほどまである白髪の少女に出会った。
その子は僕を見て
「キリ...なの?」
と聞いてきた。
すごく綺麗な声だった。
だが、僕はキリではないし、ましてや知りもしない名前だった。
僕の名前はレン。レン・ヒュナリだ。
僕は髪が黒く、目が緑というこの国では、かなり普通の17歳の青年だ。
だが、人と違うところがひとつだけある。僕は赤の雫の形をした封印用のネックレスを首から下げている。
僕は昔から不思議な力を持っている。
どんな昔のことでも正確に思い出せるし、透視ができるし、思考も戦闘能力も常人より遥か上だ。
その力は、人から見れば気味が悪いと思われていたようでネックレスによって封印を施されていた...。
そこからは思い出したくなくて目を開け我に返る。
そこには、あの少女が立っていた。
金の装飾が施された純白で短めのワンピースを着こなし光を反射させているように見えた。
変わらない何もかも見通すような蒼い目で僕を見ていた。
その子は浮いていた。
「君は...誰だ?ここはどこなんだ?」
「そうね、先に名前を教えておきましょう。名前はアビス。アビス・リターンよ。アビスとよんで。私はアテナ、知恵と戦略の神を司っているわ。神の存在くらいはあなたも知っているわよね?ここはそういう世界なのよ。」
突然神の世界に転移してしまったレン。
そこで出会った少女、アビス。
神の世界を知ってから、レンはどんどん闇の世界へと歩を進めるようになる。
それに責任を感じてしまったアビスは、レンを葬ろうと考える。
だが、それは気づくのがおそすぎた。
今となってはあまりにも無謀であった。
「世界をおとしていこう________。」