作品情報
短編
1,221文字
純文学〔文芸〕
最終更新日:2025/06/11 13:43
雨の日は、決まって図書室にいる。
そこは僕にとって、静けさと安心をくれる場所だった。
けれど、ある日突然、
「ねぇ、それ面白い?」
黒髪ロングの、ちょっと失礼で、でもどこか気になる後輩・澪が現れた。
本の趣味が合うのに、音楽の趣味はまるで真逆。
そんな彼女と少しずつ交わす会話は、雨音のように静かで、でも心の奥に響いた。
けれど、楽しかった日々は、ある言葉で終わりを告げる。
「私、引っ越すんだ」
何気ない雨の日、何気ない別れ。
それでも残ったのは、一冊の本と、あの図書室の記憶。
静かな日常にそっと降り注ぐ、優しい別れの話。