神は、努力を見ていなかった。 　村の少年リアンは、幼い頃に憧れた騎士のように「誰かを守れる人間になりたい」と願った。 　才能も魔力も持たないただの村人だったが、それでも諦めなかった。 　血が滲むほど剣を振り、眠る間も惜しんで鍛えた。 　――努力は必ず報われる。そう信じていた。 　だが、その努力はある日、転生者の“奇跡”によって否定される。 　彼の目の前で、神に選ばれた少年は笑いながら、 　リアンが何年も積み上げてきた技を、一度見ただけで完璧に再現した。 　祈っても、救いは来なかった。 　努力しても、神は微笑まなかった。 　ならば、祈りなど要らない。 　――信仰を捨て、己の剣で神を斬る。 　これは、報われぬ努力の果てに“神殺し”を誓った男の物語。 　祈りを捨てたその手に、救いはない。 　だが、彼はそれでも前を向く。 　「俺は、神を殺せるほど強くなる。」

信仰の国、テアドル。 神に従い、剣を振るってきた男は、ある日その命令を拒み、姿を消した。 祈りも言葉もない場所で、“火”だけが継がれていく──。 沈黙のなかで交わされた、語られなかった思想の記録。