「この世界に、僕を見つけてくれたのは――目の見えない彼女だった。」 目覚めた時、僕は“火”だった。 名前も、体も、声もない。 見ることも、喋ることもできない、ただのウィスプ――ちっぽけな火の玉。 世界の隅で、誰にも気づかれずに燃えていた僕を、 たった一人、見えないはずの“彼女”が見つけてくれた。 極度の視力障害を抱えながらも、 優しく語りかけてくれた年頃の女性・ルーナ。 彼女と出会い、少しずつ“形”を持ちはじめた火の僕は、 祠を出て、街を目指し、世界と向き合う旅へと歩き出す―― 忘れられた魂と、祈る女性が紡ぐ、 “姿を持たない恋”と“誰にも見えなかった冒険”の物語。