王国の命運は尽きた。王は、最後の時間を妹と過ごしたかった。だが、革命軍の迫る足音が聞こえる。王は妹を連れて、秘密の通路から城を脱出する。この決断に後悔はない。しかし罪悪感がないわけではない。妹は兄を慰める。兄が笑顔になれるように、優しく話しかける。兄も妹を守りたいと思う。妹が幸せになれるように、新しい人生を始めようと決意する。2人は海を渡って、遠い国で暮らすことになる。そこで2人は、平和な日々を送る。互いに支え合い、助け合い、笑い合う。自分の幸せと共に、相手が幸せであると感じられる時間。それは、2人にとって最高の贈り物であった。

　光魔法の素質があると判定されて僧侶見習いになった少年ライト。だがある時、魔物の群が村を襲い、大勢の村人が重傷を負って命を落とした。その中にはライトの母親もいて、ライトは実力不足を嘆いた。 　家族を失った村人たちは、ふがいないライトに怒り、村から追放して魔王城に放り込んでしまう。ただの村人が魔王城の強力な魔物にかなうわけがない。見つかったら死ぬ。ライトは生き延びるために、魔王城を徘徊する魔物から身を隠して逃げ回る。だがそうするうちに、どんどん奥へ進んでしまう。そしてついに魔物に見つかってしまったライトは、近くにあった扉に逃げ込むが、なんとそこには魔王がいた。 　ただの村人が魔王に遭遇。これは確実に死んだ、と諦めたその時―― 「あれ？　お前、余の子か？」 　ライトは、魔王に知られずに生まれ育った魔王の子だった。 　魔王から受け継いだ闇の魔力を鍛え、魔王と互角に戦えるまでになったライトは、あの日救えなかった人たちの代わりに、誰か別の人を救うべく、魔王城を旅立つ。