この世界には『迷宮』と呼ばれる不思議な構造物が存在する。 　それは、神が魔神と戦うために、人に力と武器を与えるために造った試練であった。 　世界の五十の迷宮は全て攻略され、迷宮を攻略した者たちは『神具』と呼ばれる最強の武器を手にしたが、いざ魔神との戦いになると彼らは集まらず、神は魔神に敗れて世界は暗黒に包まれた。 　そんな滅びを待つ世界で、再び魔神と戦うため神具を集める者がいた。 　――その名は『ゼノ』。 　ゼノ自身は神具を使えず、魔神と戦う力は有しない。 　迷宮には、神具は残されてはいない。 　魔神と対となる神はすでに無く、神具を集めようとも勝機は無いと言われている。 　神なき世界で奇跡が起こることもないだろう…… 　絶望的な状況の中で、貴族となって栄華を極める持ち主を殺し神具を奪い、『契約の刻印』の秘術で他者を魔神との戦いに送るゼノ。 　彼の行動は『悪』である――ゼノ自身が知るように……。

北の王国ノルデスラムトの第3王女アルネリアは、食べることに異様な執念を燃やす15歳。 ある日、南の王国ソレイヤールから姉宛てに、縁談と3枚の肖像画が届けられた。しかし、王太子ヴァレリウスが描かれているはずの肖像画には、中年男と丸顔の男、そして悪魔のような顔の男が描かれている。どれが王太子？　そもそもこれはどういうこと？　 その謎を調べるため、そして「キジの丸焼きと鴨肉のパイ」を食べるため、仲間と共に男装して南国ソレイヤールへと向かう。 ひょんなことから、王太子が呪いの魔法がかけられていると知ったアルネリアは、その呪いを解くために奔走することに。ときどきコミカル、シリアスなところもあります。 ※この小説は、セルバンテス様にも掲載しています。