キマグレギルド長編第十四弾「彷徨える獣」 リラ国で起きた目潰し事件。 騒ぎの夜が明け、平穏を取り戻そうとする町の片隅で新たな日常を迎えようとしていた東雲雅日は、リラ国の化身ラセット・リラの御前へと招かれた。 「雅日、騎士団の一員として働く気はないか？」 体内での魔力生成が安定しない体質――先天性魔力不全を抱えた騎士、隊正。 雅日が任された仕事のひとつは、彼が抱える魔力由来の不調を支えること。 今まで自分は非能力者だと信じて疑わなかった雅日だが、雅日自身の努力次第でこれから魔術師になれる可能性があること知る。 主君の期待に応えるため、隊正と行動をともにしながら、雅日は魔術の世界に足を踏み入れるのだった。

キマグレギルド長編第十三弾「虚像の傀儡」 水を司る守護神の本拠地、ウォルトにて子どもが行方不明になるという事件が起きた。 事件の捜査のために囮を兼ねて子どもの人手がほしいと依頼され、ロアはその任務にリワン亡国の化身、リン・ヴェスワテルを同行させることにした。 依頼人はロアとは犬猿の仲にある、セレイア国の化身、セレイア・キルギス。 現地の教会を拠点にするといい――彼の助言に従い、一同はウォルトへ発つのだった。

キマグレギルド長編第十二弾「巣窟の女神」 翡翠雫希が何者かによって連れ去られた。 その先で彼女が目にしたのは、地獄であり、箱庭であり、鳥籠だった。 激情に身を焦がす鬼。 冒涜を繰り返す獣。 自由を知らない雛鳥。 牢獄に捕らわれ、過去に囚われた者たちは脱出への一歩を踏み出していく。 邪悪であれども悪意はなく、それは惨憺たる真相に蝕まれた欲望の果て。 犠牲を重ねて怨嗟を連ね、汚れた手を伸ばし、そこで得たものはなんだったのか。 有象無象がひしめく巣窟の奥で、女神は誰に微笑むのか。

キマグレギルド長編第十一弾「相貌の偽水晶」 リラ国に住む人形師、早乙女岳の屋敷に一通の手紙が届いた。 娘の命を狙う旨を記した脅迫状の送り主を突き止めるべく、任務に向かうのは探偵をはじめとした九人のギルド員たち。 見えているものだけが答えとは限らない。 裏に潜んだ悪意を暴き、突き止めなければ安息はない。 戦いの幕はとうに上がっているのだ。 勝つためには暗躍者を見つけ出せ。

キマグレギルド長編第十弾「色褪せた写真」 写真とは、いわく、切り離された過去の残滓。切り取られた思い出。 もう戻れない過去の一瞬。心を縛る一枚の時間。 悪夢に悩む少女、彩賀絵里香は絵を恐れた。 恐怖の根源は夢の中に。 光の差す森の中、泉のほとり。黒い女が彼女を見ている。 色褪せた写真を持っているのは誰か。

キマグレギルド長編第九弾「陽気の陰影」 警備隊所属、若くしてロワリア部隊の隊長を務める男、或斗。 そして彼の部下であり相棒でもある女性、赤兵。 二人がロワリアにやってきたのは、つい最近のことだった。 夜の酒場。或斗は新人隊員、吉島梨乃香に過去の思い出を語る。 「酒の肴にはちょうどいい」 彼にとっての始まりとは、はたしていつのことなのか。

※現在リメイク工事中です。

キマグレギルド長編第八弾「水流の海」 ある日、水流一罪に課せられた任務は、彼の故郷であるセリナ国への遠征だった。 故郷に対し抵抗があった一罪は意に反する命令に煙草をくゆらせながら舌打ちする。 そして仕事と割り切り、嫌々ではあったが七人のメンバーと共にロワリアを発った。 海はまるで、彼の苦悩を嘲笑うかのように波の音を響かせる。

キマグレギルド長編第六弾「終末恋物語」 　何度死んでも蘇る不死身の体を手に入れた青年、秋人は新たな移住先であるライニ国で一人の少女と出会う。 　桜と名乗ったその少女の境遇を気の毒に思った秋人は、彼女の手助けをすることに。 　これは彼がかのギルドに至るまでの前日譚。 　そして彼が抱く後悔のすべてだ。 「秋人さんは、死ぬのは怖いですか」 　その問いに、彼は答えることができなかった。

キマグレギルド長編第五弾「探偵一派」 　真実を語る者――謎多き探偵と、彼を取り巻く四人の奇怪な者たち。 　異形の小人、名無しの吸血鬼、罪刈りの人、不死身の死体。 　彼らが探偵のもとに集ったことに特別な理由などはなかった。 　一度つながった縁は、再び途絶えるそのときが来るまでつながったままである。 　それは至極、当然のことだろう。 ※今作は「えんどる日誌」にて過去に公開していた読み切り短編を再編し収録したものです。 ※原案となる短編集は今作の投稿に伴い、現在では公開を終了しています。

キマグレギルド長編第四弾「千年世界録」 　物語のはじまり。それは十年前のあの日のことだろうか。 　それとも、それよりもさらに過去のことだったのだろうか。 　ある雨の夜、行き場を失った二人の少年を発見したロア・ヴェスヘリーは、彼らが安心して暮らせる施設が見つかるまで一時的に保護することに決めた。 　話を聞いた他国の化身たちが物珍しそうにしているのは、ロアがこれまで特定の人間に対して特別に入れ込むことなどなかったからだ。 　だが厳密には、ロアには過去に一人だけ、その懐の内に入られることをよしとした人物がいた。 「やあ、久しぶり。……いや、半月前に来たばかりだったか」 　月明かりの降る丘の上で、ロアは今日も歓談に興じる。 　唯一無二の友に微笑みながら。

キマグレギルド長編第一弾「無縁の少年」 　ただ、真実を知りたい。 　何の変哲も無い生活を送っていた早川春斗に突然訪れた悲劇。 　失踪した兄の居場所を知るために、少年は一人、ロワリア国へ足を運ぶ。 　彼が訪ねたのは、どんな依頼も引き受けるという、とある組織だった。 　――嗚呼どうして、こんなことになってしまったのか。

キマグレギルド長編第三弾「真冬の紅葉」 　――それは寒さが身に凍みる、真冬に起こった事件だった。 　女性ばかりが狙われる連続傷害事件。 　犯行被害はギルドにまで及び、警備隊からの依頼を受けた探偵は事件の捜査をはじめる。 　事件の根源は、少年少女をめぐった複雑な感情の交差だった。

キマグレギルド長編第二弾「黒鳥の夢」 「あの日のことを覚えているか？」 　雷坂郁夜は夢を見た。 　それは十年前のとある出来事を映した明晰夢。 　毎晩繰り返し見るその夢は、ただの偶然というにはあまりに不気味で、あまりに出来すぎていた。 　十年前のあの日。 　その気まぐれがあったからこそ、すべては始まりを迎えたのだ。