時空ごと消し去る能力を持つ「破戒僧」となった改編数学者ジミーの前日譚。 『情欲をいだいて女を見る者は、心の中ですでに姦淫をしたのである』 『姦淫を犯した男女は死刑…』 ジミーは、この預言の言葉によって育てられた少年だった。ただ、その預言ゆえに、彼にとって女体という迷宮はおろか女性に接することすら難しいことだった。彼にとって出来ることは、女性たちの声と表情によってのみ個々の女性の存在を把握すること。そのうえ、彼は独りよがりで愚鈍、家族・親族と共にいる時には彼らの言葉と威を借りる小心者だった。 　そんなジミーは、ある時ひょんなことで父親の伊作から、代々受け継がれてきた天寵の改編数学を伝授され、「破戒僧」となることを預言された。その後、天寵を軽んじて受け取れなかった兄イサオの逆恨みにより、ジミーは伯父ラバンの下に身を寄せる。そこで、ラバンの双子の娘　理亜と玲華とともに荏原学園高校に入学した。 　ジミーは脳の片隅に受け継いだ改編数学を活用することによって、全ての学科で圧倒的成績を修めるようになった。だが、脳の片隅が動かなければ、彼は単なる木偶の坊だった。 　彼のクラスでは、ラバンの双子の娘理亜と玲華との二人や彼女らの友人達の他に、ジミーを監視していたユバルがいた。 　ジミーは、そこで様々な経験をし、次第に能力を発揮し始めた。それと時を同じくして、ユバルが不穏な動きをし始めていた。彼の正体は、過去に呪いを受けて多次元時空へ彷徨い出た先史人類カインの末裔カインエルベン（カインエルフ）族のユバル。彼の任務は、現時空の現生人類を連れ去って利用することによる先史人類の救済だった。 　エルフ族の魔法が暗躍し始めた時、ジミーの改編数学術もまた活用の範囲を広げていく。ジミーを助けるラバンの結社チャウラのメンバーを巻きこみ、その戦いは拡大した。だが、エルフ族の大魔法が展開した時、ジミーの周囲から若者たちの集団、すなわち学園と称するすべてが世界中から奪われてしまった。