満月の浮かぶ静かな夜。久遠かなたは音を聞いた。普段の生活からは聞きなれない不思議な音だった。よしておけば、いいのに。僕はその音が気になった。 ふらふらと導かれるように公園の中に入るとそこには―――― ――刀を持った女の子とそれと戦う小さな女の子の姿が。 刀を持った女の子は僕を見て、逃げ。小さな女の子は自らを“吸血鬼”と名乗る。 彼女曰く、彼女は記憶がなくて。けれどもとても優しく、とても強い。……だけど子供。 僕の危機を救うため、彼女は僕の血を吸い、力を振るう。 それは“本物”の“吸血鬼”の力だった。 そして、僕もまた“本物”の“吸血鬼”へと――。 吸血鬼になってからかなたの毎日は変わった。 変態シスター。ヤンデレクラスメイト。天然吸血鬼。 色んな異常に振り回されながら、日常を生きる学園ラブ・コメディー！

　異世界暦2122年３月。魔族側と人間側の間に生じた３度目の世界大戦の末、人間側の王都は魔族の手によって陥落した。その直後。人間側の擁する７大大聖女の１人・"時空の大聖女"の台魔法によって世界の時間は５年前に巻き戻された。人々の記憶もリセットした状態で。 しかし、王国辺境に住んでいた農民のケインだけはなぜか５年後の記憶を保持したまま、5年前の世界に時間遡行してしまう。 　なぜ自分だけが未来の記憶を持って過去にタイムリープしてしまったのか。その答えを知るために王都に出たケインは時間を巻き戻した張本人である大聖女・レインに出会い、自分には「大聖女の魔法の影響を受けない」特殊体質があることを知る。 　世界最強のはずの大聖女の魔法が全く効かないケインに、最初はひどく怯え、警戒するレイン。しかしそんなレインには愛してやまない妹がいて……。 「ま、魔法が効かないあなたになんて絶対屈したりしないんだから！」 「いや、俺、そんなことしないから」 「お姉ちゃん、そこのお兄さんかっこいい！　そこのお兄さん、お姉ちゃんの彼氏だよね？」 「ッ！　そ、そうよ、この人が私の彼氏のケインなの！」 「はぁ？」 　重度のシスコン大聖女の見栄っ張りからはじまる、ケインとレインの偽りの恋人生活。巻き戻す前には決して交わらなかった2人の交わりは、2人を振り回す奔放な妹やケインの幼馴染、大聖女に仕える変態神官にケインの元の世界での『元カノ』まで巻き込んで、2人の、そして5年後には終わりを迎えるはずだった人類世界の運命も変えていくことになる――。 　これは、妹しか愛せなかった大聖女に大切なものが増えるまでのお話。 　そして、時間の巻き戻しによって家族を喪った男が、再び"家族"を手に入れるまでの物語。 ＊3月8日、『【悲報】タイムリープ魔法に巻き込まれた元妻子持ち俺、大聖女から迫られて彼氏のフリをする羽目になる。』から改題してみました。