少数派、マイノリティの声がより響くようになった世の中。生きる自由に死ぬ自由、どんな人間であっても、その人権は尊重されるべき。死ぬ権利もまた尊重。そうして、世界の多くの国々で安楽死が認められることとなった。 　 『ようこそお越しくださいました。あなたにとって、良い旅立ちとなりますように』 　安楽死施設、ユーサネイジア・センターに青年は足を踏み入れた。 　どこからか流れてきた自動音声に出迎えられ、青年はそのスピーカーがあるであろう方向へ顔を向けた。しかし、見つけることができず彼は、ふん……、と鼻を鳴らした。緊張を隠すための虚勢だった。声がした瞬間、ビクッとしたことが恥ずかしかったのだ。 　前を向き直した青年は、正面にある受付カウンターに座る女と目が合った。女はニコッと微笑んだ。カウンターには照明が備え付けられているのだろう、その光が女の皺に影を落とした。 　青年は口角を上げようとしたが、やめて、目だけで辺りを見渡した。 　病院の待合室。あるいは大企業のロビー、それか最先端の研究所といった雰囲気だ。黒い大理石のタイルの床、壁は白。青年の後ろ、建物の正面部はガラス一面で、太陽光を大きく取り込んでいる。 　受付カウンターへ歩き出した青年は、ちらりと後ろを振り返った。 　平原とその奥に雑木林が広がっており、一本の灰色の道路が伸びている。その上を走るバスの後部が見えた。 　青年は前を向き直した。鼻から息を吐く。臆したのではないと示すように。 「ようこそお越しくださいました。安楽死をご希望の方ですね」

　遥かなる過去に夢想された理想郷は遂に誕生し、高らかにその産声を世界に轟かせる 　楽園の微睡みに堕落し、潰えた人の生は人の世の最期を築く礎となり、遂には【生命復元技術】により人間は《死ぬ自由》すらも喪失する 　そんな世界で、《懸命》に生きる幾多の奇人変人 そして、二人の少女の物語 第一章 : HELLOW UNDERWORLD 『現実に存在するありとあらゆる元素を演算し、存在しない元素さえも仮想空間上にて限定再現を可能とする新技術。 　仮想現実接続端末によって仮想現実に降り立つ二人は、ある時は怪物を鏖殺し、ある時逃げ惑い、ある時は仲良く喧嘩を、そんないつもとあまり変わらない日常にて、とある村落へと至る。村落にはヒトガタが田を耕し生活しており...』 第二章 : セカイノカタチ 『村落を後にした彼女らは下山途中に《無人偵察機》と遭遇する。《無人偵察機》から発せられた現場指揮感を名乗る男から提案され、彼女らを国家権力の軍隊である《自衛隊》と呼ばれる者等が保護すると。しかし、彼女等は...?』 　不自由を望み、自由を謳う 　自由の旗下にて理不尽へ対する 　己の全てを賭してさえままならぬ、心を砕く地獄を 　生きることを望むままに死を望む己の矛盾に解を為す 　望むは羅刹、難題を越えた難行 　神話にさえも語られるだろう、珠玉の試練 『自由とは。恐れを知らず、挫折を知らぬことではない』 『私たちには、全てを知る自由がある』 『私は己の全てを賭してさえ生きられぬ極限、理不尽を望む』 『私は、己と共にあり己を知る無二を得る。私は、《無双》でなく《比翼》を望む』

「死ぬ自由」が保障されないのは何故か？ ※この作品は、カクヨム、エブリスタにも掲載しています。