転生した記憶とこの世界で培った知識を結びつけ、薬師見習いとして町を支える橘ミサキ。冷静で論理的な彼女は、薬草の調合や防衛策の設計で仲間たちの命を救ってきた。だが公爵クラウスの軍勢が町を包囲し、仲間の命を人質に取る形で「知識の独占」を迫る。選択を迫られたミサキは、自らの能力を限界まで使い仲間と町を守る作戦を実行する。成功の代償は、彼女自身の前世の記憶――そして自己の一部だった。 その過程で明らかになるのは、観察者と呼ばれる存在の正体と目的だった。観察者は未来の可能性の一つであり、ミサキの魂は複数の時間軸に分裂しているという残酷な真実。記憶消失が進むほどに真実の扉は開き、その代償として彼女は自我を失う危機に瀕する。だが仲間たちの信頼と連携は、知識を共有することで町を守る力となり、公爵との対話や防衛戦を通じて彼らの絆は強まっていく。 クライマックスは、観察者の直接介入と公爵の贖罪の瞬間。公爵の攻勢を退ける一方で、観察者は最後の試練を突きつける。真実への扉を完全に開くか、あるいは自らを守るために記憶を留めるか。ミサキが下す選択は、この世界の未来と彼女自身の存在の在り方を決定する。希望と犠牲、信頼と裏切りが交錯する群像劇が、ここに幕を開ける。 「毎週:日曜日に投稿予定」