またいつもと変わらぬ「今日」が始まる

2062年、長く続く第三次世界大戦は硬直状態にあり、何処もかしこも無言の睨み合いが続いていた。 　そんな中、高校に進学してかれこれ二年目の学校生活を送ろうとしていた少年、永龍　和真(ながりゅう　かずま)はあるコンプレックスを抱いていた。 それは、自分には中学二年生以前の記憶がない事だった。時々出会う人々がたとえ昔馴染みだったとしてもその顔さえ分からない。この事は彼に底知れぬ不安感とストレスを与えていた。 そんな彼を気遣い、心優しくする生徒会長、長澤　真希波（ながさわ　まきな)は彼にとって良き理解者であり、同時に尊敬する人物だった。 　いつも通り通学した和真は、春休み明けの微妙な気怠さとクラス替えによる高揚する気持ちを抑え、クラスメイトの面々を気にしていた。 そこでふと目についたのは、学年のアイドル的存在であり、大手IT企業社長の娘にして成績は常に学年トップの秀才、鬼塚　百合恵(おにづか　ゆりえ)だった。 彼は彼女に入学式以来から淡い恋心を抱いており、同じクラスになった事を密かに歓喜していたのだが、彼女は唐突に和真を別室に呼び出す。 「お友達になって欲しいの！」 彼女の言葉は嬉しいものではあったが、告白を期待していた和真は思わず口を滑らせ、 「何？セ○レの事？」 などと言ってしまう。 勿論顰蹙(ひんしゅく)をかうものの、楽観的な彼はそのまま反省する気配など全く見せず日常を浪費していく。 そんな中彼は長澤真希波や鬼塚百合恵など、様々な人間の正体を知り、それと同時に魔術と超能力の争いに巻き込まれていく。その争いの中で、少しずつ自分が何者であるかも気が付いていくのだった……… 光輝麗(みつあき　れい)手がける学園異能バトル+ラブコメが幕を開ける！誰も予想する事が出来なかった結末に君は生き延びる事ができるか！彼の処女作に向後ご期待あれ！

毎日が気怠い。 朝起きることも、外出の支度をすることも、単位を得るべく教室で講義を受けることも、サークルに参加することも帰宅することも睡眠すらも、生活に伴うすべての行為には気怠さがべったりと張り付いていて、ありとあらゆる幸福を一様に僕から遠ざけていた。 唯一の例外は、知り合いと言うのもギリギリの関係でしかない同級生との時間。 キャンパスで偶然に彼女に会い、会話とも言えない短い言葉を交わす、そんな時間だけ。 連絡先すら知らない僕は、そんないつ手に入るとも知れない時間を得るために毎日欠かさず登校するしかなかった。 特別に気怠いこの忌々しい身体を引きずってでも、そうすることだけが僕の幸福への手段だった。そのためだけならば僕は、この気怠さとも付き合っていられた。 あの日、真っ白な空間で、相変わらずの気怠さとともに目を覚まし、意味不明の巨大な文字列が空中に浮かんでいるのを霞む目で見つけたあの時までは。 大学生の岸根航(キシネ ワタル)が見知らぬ世界に転移し、もう会うことのかなわない『君』に思いを馳せるお話。