勝ち負けにとらわれず、スポーツを自己表現の場として捉える少女アリナの物語。試合中の一瞬一瞬を味わい、自分自身のリズムと線を描くことに意味を見出す姿を描く、哲学的な短編ストーリーです。ヘラクレイトスの「万物流転」や、日常の中の小さな気づきが、読者に自分自身の生き方を考えさせます。

ある国が重い戦争賠償金を背負い、国民が疲弊していた時代の話です。 人々は国や制度に助けを求めましたが、それは期待通りの救いにはなりませんでした。そんな中、かつて国を変えようとした人の思いは、「ジョン」という新しい生き方として静かに広がっていきます。この生き方は英雄も制度も必要とせず、ただ日常を分かち合うことを大切にしていました。 一方、戦勝国の都市部に住む保険営業マンのカールは、制度に守られた生活をしていながらも心の空虚さを感じていました。ある偶然から彼は「もうひとつの社会」の存在を知ることになります。 この物語は、管理された社会と自由の間で揺れ動く世界で、本当の豊かさや安心とは何かを問いかけます。制度や保障に頼るのではなく、今この瞬間を生きる喜びだけでつながる世界を、人は本当に選ぶことができるのでしょうか。

俺たちは、瞬間瞬間を生きる。

今、この瞬間を生きるとはどういう事か

三十歳の誕生日を迎えた津々見拓馬は、輝かしかった学生時代とは対照的に、年月をかけて生み出し、定着化させてしまった過去から抜け出せずにいた。 修復不可能に絡まりきった糸はどこでもつれてしまったのか、必死で過去を解き明かそうと葛藤を繰り返す拓馬の前が出逢ったのは、行きつけの漫画喫茶の店員、池脇紗枝だった。 過去に囚われ過去が増える時間の無慈悲さに抗えない拓馬だったが、紗枝の今この瞬間を生きる純真に、段々と自らの心の垢は剥がれ落ちていく。 しかし、拓馬の心の深淵にある最後の垢に気づいた二人は……。 人が過去を覗く時、過去もまた、覗き返している。