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作者:スワオ/作品情報/Nコード:N1997KO
完結済 (全11エピソード) |
罪状は、実に些細なものだった。中学生が土曜日に繁華街を歩いていた──ただそれだけ。
美術教師が引用したのはは、マイヨールの『とらわれのアクション』——縄に縛られ、もだえ、抗う女性の肉体を彫り込んだ、あの大理石の彫刻だった。
少女の両腕もまた、「指導という名の縄」が存在するかのように、がっちりと後ろ手に縛られていた。
しかし、美術教師の語る「罪」は、そんな表面的なものではなかった。
少女にはわかっていた。問題とされたのは、彼女がすでに「少女」ではなくなりつつあること。
「これは、私への罰ですか?」
少女の問いは、静寂の中をまっすぐに走り抜け、壁際に並ぶ石膏像たちへと跳ね返った。
その問いに、美術教師は即答しなかった。だが、答えは彼の身体がすでに示していた。
拡大した瞳孔、汗ばんだ鼻筋、不自然に上下する喉仏。それらが、彼の感情を、欲望を、隠しきれずに物語っていた。
彼にとってこれは「教育的指導」などではなかった。
審問という形式を装った、私的な欲望の投影であり、その執行だった。
矯正とは名ばかりで、実態は「愉悦」だった。
「お前のような身体は...もっと罰せられるべきだ」
少女の内面には、緩やかで静かな変化が起きていた。
なぜ自分が罰せられるのか。その理由が、具体的な行動ではなく、存在そのもの──この身体の形、皮膚の張り、骨の角度──にあるということを、彼女は悟りつつあった。
そしてそのとき、自分が審問者の「欲望の鏡」として機能していることにも気づく。
美術は人を裁かないはずだった。だが今、この部屋では──表現という名を借りた告発と懲罰が、確かに行われていた。
「それが、私の罪ですか?」
ジャンル:ヒューマンドラマ〔文芸〕キーワード: 昭和 80年代 管理教育 名古屋 内申 中学 教師 美術 学校 性描写 R15 最終更新日:2025/05/31 08:08 読了時間:約52分(25,661文字) 週別ユニークユーザ: 100未満 レビュー数: 0件 総合ポイント: 4 pt ブックマーク: 2件 評価人数: 0 人 評価ポイント: 0 pt |
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