「――君、転勤の話だ」 東京の大手メーカーで働く26歳のサラリーマン、鍛冶内 崇（かじうち たかし）。繰り返される退屈な毎日に、生きる実感さえ失いかけていた彼に下されたのは、日本海側の田舎町「湊市」への異動だった。 崇が辿り着いたその街は、なんと日本で唯一、自宅でお酒造りが許可された【自家醸造特区】だった！ きっかけは、この街を舞台にしたアニメの大ヒット。市長の夢とオタクの熱意が国を動かし、奇跡の街が生まれていたのだ。 大学時代に学んだ生命科学の知識。忘れかけていた知的好奇心に火がついた崇は、広すぎる社宅の片隅で、見様見真似のビール造りに挑戦する。 酵母のささやきに耳を澄まし、生命の神秘と向き合う日々。そうして生まれた黄金色の一杯は、地元で獲れた新鮮な岩牡蠣や海の幸との、まさに禁断の相性（マリアージュ）を見せる！ これは、無気力だった一人のサラリーマンが、手作りの一杯をきっかけに、最高のグルメと「モノを生み出す」本当の喜びに目覚め、何もないと思っていた地方都市を"最高の楽園"に変えていく物語。 ――さあ、あなたも一緒に、最初の一杯を味わってみませんか？

旧題「コロルリア、ゆるゆるだらりと季節を渡る」 テアは魔女の称号を持つ色彩魔術師だ。 辺境にある小さな集落に工房を構え、注文に応じた色彩素材を作りながらゆったりと暮らしている。 季節の行事を楽しみ、時には異国へ旅に出たりしながら好奇心を満たす生活が続いていく。 　 「何人でもかかってらっしゃい。その勝負、受けて立つわ」 「勝負じゃないから」 「なんでそんなに武闘派なんだ、君は」 魔女と精霊と幻獣が存在し、魔術と科学と少しの不思議がある世界の中で、お調子者でうっかり屋の魔女が送る丁寧な暮らしに見せかけた騒がしいスローライフ。 ヒトとそうでないモノが当たり前に共存し、善き隣人として生活する中で、飲んだり食べたり作ったり失敗したり成功したりする愉快な人たちの一年を追うだけの単純なお話です。 ※冒険者もいなければ倒すべきモンスターもいません ※ダンジョンもありません ※ステータス的なものもないです ＊不定期更新＊