終戦により役割を無くした従軍病院にて、今日、最後の患者が退院する。 　そこで看護婦長を務める女性と、なんとなく調子のいい若い青年の患者の二人は、果たしてその時何を思い、何を話すのか。 　ある春の日の、穏やかな会話の記録。

日露戦争に従軍した周防大尉は戦闘で負った傷を癒すべく、佐世保の海軍病院を目指す病院戦の寝台に横たわっていた。 そんな周防大尉の夢枕に、旅順や奉天で死に別れた部下達の霊が現れるのだが… ※本作品は、夏のホラー2023参加作品で御座います。

帰去来のプロローグの一つ目。敗色濃いミャンマー戦線へ派遣された私（陸軍士官　山形勇助）は、陸士５７期の同期アウンに紹介された、ミャンマー人娘ルインと、熱病のような恋に落ちた。 　ある時、ルインは勇助をセントメアリー寺院に誘う。いないはずのマザーがいるのを見たルインは、勇助とともに告解をした。その後、二人は謎のマザーの預言通り、結婚した。 　その後、ルインはサイゴンの陸軍病院で男児汰欣(タゴン)を出産し、予後がよくない彼女ははサイゴンの陸軍病院に収容された。 　このころ、敗色濃い日本軍はミャンマーから撤退。取り残された勇助は、サイゴンに残っていた戦友の辻堂泰造に助けられて、何とかミャンマーを脱出し、サイゴンに居るルインの病室にたどり着いた。その後、ルインは、初子汰欣(タゴン)を勇助に託すと、息を引き取った。 　敗戦後、勇助は、ルインの忘れ形見である一人息子、山形汰欣(タゴン)を抱いて、ミャンマーから日本に戻っていった。

昭和二十年の東京大空襲で負傷した湊子は海軍病院に入院するが、肺炎を併発してしまい幾ばくも無い命になってしまった。 心を寄せる山野中尉は、戦艦大和に乗り組み、四月七日の水上特攻で帰らぬ人になってしまう。 山野の戦死を知らぬまま息を引き取る湊子は、その思いの強さゆえ、肉体は滅んでも生きる意志を持ったまま時かける少女になってしまった……。 湊子の時空を超えた旅が始まった。

戦争で怪我をしてきた軍人は、みな、傷痍軍人として扱われる。