「神の料理人」とは、食した者に魔力を与える皿の作り手。 かつて絶対君主に仕えた料理人は、絶望と共に霊山へ身を隠した。だが十数年後、傷心を癒す料理人の元へ、前主の王子が姿を現す。 長い遁世の間に、国は内乱に陥っていた。 料理人を脅し、強引に王都回復へ協力させる王子。「惰弱」「無能」の悪名高い、父とは似ても似つかぬ息子に、料理人は当初反発する。 だがやがて、彼の真の姿を知ると―― 強大な力の前に傷を負った、二つの魂。 共有された痛みは、育まれた絆を通じ、やがて無二の覚悟へと昇華する。 料理人よ、王子よ、固き絆で旧時代の呪縛を打ち砕け！ --------------- 同題旧版を、ネトコン13応募へ際して大幅改稿したものです。 カクヨム・Talesにもほぼ同内容で掲載しています。 7/14～22の短期集中連載です。1日あたり5話前後の更新を予定しております。

山奥の不可思議な村から帰ってきた男の話は、人の記憶に残るものがあったのだろう、人から人へと広まって、「仙人」の話として書家の筆に乗ることになった。

鎌倉の山間に遁世した人嫌いの男のもとに、絶縁状態の親戚が口のきけない少女を連れて訪れる。「口がきけないということだけで、人はこれほどまでに残酷になれるのだろうか――」憤りに任せ、男は少女を引き取ることになり、静かな二人暮らしが始まる。 暗闇の中で温かなものを手繰り寄せるように、二人きりの暮らしは穏やかに続く。少女は旅行鞄の中を決して見せようとしなかった。