この物語は、世界を救わない。ただ、ひとつの腕輪と槍と少年である。遺物は語らず、獣もまた沈黙する。名もなき男ヴォルトが拾ったのは、呪われた腕輪を身に着けた少年リオだった。助けたのではない。取引だった。ただそれだけの始まりが、終わらぬ旅になった。男は槍を携え、言葉を削り、必要なときにだけ動く。少年は最初、荷物だった。やがて動き、盗み、交渉し、肩を並べるようになる。それでも男は語らない。感情を晒すこともない。ただ戦い、守り、火を起こす。その背中を見て、少年は選ぶ。「俺はこの人と行く」と。血も信仰も通わぬこの時代で、語られぬ絆が確かにあった。腕輪は少しずつ少年を蝕み、その力に世界の残滓が蠢き始める。だが彼らは振り返らない。理由も使命も口にしない。ただ、生きるために進む。今日も、何も語らぬまま。

これは、新米解呪師と呪物コレクターを自称するやばい幼女が手を組むまでの出来事を描いた物語。

　クレインズ魔法学院を卒業し、賢者の弟子となったキャロルは今日もお師匠さまの下で修業中。ある日お師匠さまのお師匠さまの命令で、帝国北方の危険な山岳地帯へ千年前の戦争の遺物探索に向かうことに。 　いや、せっかくだから実戦のひとつでもしてこいとか、そんな「ちょっと蜜柑買ってくる」みたいな気軽さでいわないでくださいよ。 　って、その場所って魔境じゃないですか！！ 　いやいや、お師匠さま、なんでそんなはしゃいでるんですか！？　え、帝国にいる姉弟子へのお土産を買いに行く？ 　いやいやいや、ちょ、待って、待ってくださいお師匠さま！　お土産よりも大事なことがあるんじゃ――お師匠さま！？ 　はたして、キャロルの修行はどうなるのか？ 2022/10/20 改題。旧題【見習い召喚術師の少女は今日も元気に修行中？】 2022/10/20 おかしな試みをしていてた結果、いろいろと破綻してたため全面改修。一応完了。