冒険者の血と肉は酒で出来ている。 なんてことを嘯き続けて早１５年、万年シルバーの冒険者ロンドは酒場で出会った派手めな酔っ払いお姉さんと勢い任せに一夜を過ごすことになったのだが……彼女は最高ランクの神官リディア＝クレイスティアだった！！ 女王陛下とまで呼ばれる鉄の女も酔っぱらっちまえば愚痴を言い、悪口叫んでキャハ笑いしながら机をバンバン。のんべえロンドは持ち前の明るさと面倒見の良さでリディアの憂さ晴らしに付き合っていくが。 かつて夢見た冒険者の高み、そこで苦しみながらも戦い続ける女の姿に触発され、ロンドも再び成り上がっていく決意を固める。 ここは人類の最前線、険しきを冒して進む、冒険者の町。 底知れない迷宮に、伝説に謡われる竜、東の果てより出でる魔のモノ共、途絶した太古の歴史、そして神官に力を与える外なる神。 世界には、まだまだ未知が溢れている！！ 敗北と失敗を折り重ね、折れて尚も立ち上がり、重ね続けた厚みを以って。 血肉を酔わせて笑い征く、燻り続けてきた男の導く冒険の果てを。 とくとご覧あれ。

大学に通いながらイラストレーターとして活動する東野修二には推しがいた。大人気Vtuver「不知火コハク」、他者を魅了する美声と、何より自分がデザインしたこともあって特別に感じていた。 大好きな推しに会ってみたいと思いつつ、中身を知ってしまう不安から機会があっても断ってしまっていたのだが……最近気になることがある。 隣に住んでいるお酒大好きな年上お姉さんの声が……そっくりなんだ。 あの美声、聞き間違えるわけがない……でも、天真爛漫な不知火コハクが、飲んだくれて家の前で寝てるようなだらしないお姉さんと同一人物とは思いたくない。 そう、信じたくないんだよ！

　推しであるイケメンアイドルがフリーアナウンサーとの婚約を発表した夜、河本真昼は酷く酩酊するほど酒を空けた。 　推し活四年。まるで抜け殻のような、そんな気分だった。 　もう止めときなさい。バーテンの言葉も耳に入らず、焼酎を頼み真水(0円)が出て来ようが気が付かず、真昼はまるで取り憑かれたかのように、意識を何処かへとやっていた。 　そして帰り道、終電を失いタクシーは捕まらず、真昼は歩き疲れとある小さな神社の境内で力尽きようとしていた。