これは私の30年にわたる一つの恋の記憶の回顧録です。 私が大切に抱いてきたこの恋を、誰でもいい、誰かに知っていてもらいたかった。 成就しなくても、思い出だけでも恋は持続することができる。あの時のときめきが現世の生きる糧になるんだと、知っていてもらいたいのです。

両親は離婚したものの、高校生活は何の不自由もなく過ごし、お気楽な大学生活にも何も言わず、むしろ、そんな自分の生活を楽しそうに温かい目で見てくれていた母に恩返しするべく就職するが、母が病に倒れてしまう。 順風満帆だった恋と仕事。 母の為に恋はもちろん結婚も諦め、母の看病を優先した主人公に母の死がやってくる。 今まで使えなかった自分の時間を手にし、これからは自分の人生を生きようとする。 止まっていた時間が動き出し、周りの環境が変わっていく中で十何年ぶりに彼女ができる。 と、言っても何となく始まった恋愛……とまでもいかない気持ちの定まらない恋愛……。 まだ恋愛に前向きにはなれなかった。 ただ、彼女のおかげでこれまでの毎日が一変し楽しく過ごせそうな気がしていた。 そんな時、ある事に気付いてしまう…。