“オレ様”は、この国に希望と安心をもたらし、人々が未来を描けるようにする。
そういうビジョンを抱くのが、戦略コンサルタントの朝倉迅(あかくらじん)。
世界最大の戦略コンサルティングファーム——『The Firm(ザ・ファーム)ストラテジア・グローバル』コンサル業界で畏敬と恐怖を同時に集める存在―の最強若手パートナーだ。
クライアント企業の経営陣がクラッシャーと畏怖するその姿は、まさに“オレ様”の名にふさわしい。
迅に求められているのは、日本を代表する独立系SIer――JTC社の新規事業の立ち上げ、経営改革、そして後継者問題への対応だ。
大規模かつ難易度の高い新規事業の立ち上げプロジェクトを前に、社内には緊張と混乱が走っていた。その現場に配属された新入社員が“私”=小早川結衣(こばやかわゆい)だ。
右も左もわからぬまま、いきなり迅のアシスタントとされてしまう結衣。
初日から飛んでくる罵声・罵倒と無理難題、ハードな資料作成。
泣きながらも必死に食らいつく結衣の姿に、やがて迅はただの“無能な新人”ではない何かを結衣に見出し始める。
結衣は迅の信念に触れながら、次第に自分自身の成長と向き合っていく。
果てしなく高い要求と、突きつけられる現実。
それでも立ち止まらず、もがきながら結衣は前へ進む。
結衣の姿は、読者に「挑む者だけが見える景色」を鮮やかに映し出す。
本作は、単なるエンタメ小説ではない。
戦略コンサルタントとクライアント企業の新入社員という絶望的に不釣り合いな二人が、苛烈な現場を舞台に交錯することで描かれるのは、働くことの意味、人を信じることの重み、そして誰もが抱える“壁”との対峙である。
罵倒と叱責の奥に潜む情熱に触れたとき、結衣は気づく――「オレ様」と呼ばれるその男は、本当に恐れるべき存在なのか、それとも――。
『オレ様と私』は、読む者に痛快さと共感を与える、『最悪の出会いから始まる最高の物語』です。