作品情報
短編
2,950文字
宇宙〔SF〕
最終更新日:2025/02/03 18:00
宇宙船内でサトウキビを育てている男の日常。
親父が月面基地に就職してから30年。宇宙は砂糖を欲していた。
退職金で買った宇宙船を引き継いで、今年で三年になるだろうか。それほど大きくはないが、犬と自分だけなら十分な広さがある。親父はすでに星になり、AIでしか会えない。
「これからの宇宙は甘味が少なくなる。必要な物資ばかりしか摂らない宇宙時代だが、やっぱり人間は糖分を欲するようにできてるんだ。だから、お前も何か甘い果物でも育てた方がいい」
生前の親父はそう言っていたが、宇宙の果物市場は活況に次ぐ活況で、値崩れを起こす品種も出てきている。考えることは皆同じだ。