女性しか海に出ることができない「ラ・メール症候群」、じつは白鳥士郎さんの『蒼海ガールズ』と設定が一緒で、どうもそれをご存じない方がいらっしゃるようなのが、ファンとしては淋しいところですが、だからと言ってこの作品の価値が下がることなど全くありません。
現代から真珠湾後・ミッドウェー前に転生した普通の男の子が、持てる知識と誠実な行動で、なんとか帝国海軍を破滅から救おうとする。彼の知識は決してチートレベルではないし、仮想戦記にありがちな「敵がバカ」でも決してない。時代考証を無視した新兵器なんかも出てこない。限られた情報をもとに、女の子たちが精一杯の知恵と勇気を振り絞って、圧倒的優位に立つ大国に抗う。五十子をはじめ、魅力的なキャラクターとあいまって、ただただ手に汗を握って戦況を見守っていました。作風は全然違うけど、佐藤大輔さんの諸作品にも似た読後感を覚えます。絶対にお勧めします。