桜舞い散る四月の午後、高校三年生の私の前に現れた転校生・拓也。春の陽だまりのような優しい笑顔と、どこか儚げな瞳に、私の心は激しく揺さぶられた。 文芸部で過ごす放課後の時間。彼が書く繊細な文章に魅了され、一緒に原稿用紙に向かう日々が私の世界を輝かせていく。でも時々見せる彼の寂しそうな横顔が、なぜか胸を締めつける。 夏祭りの夜、花火の下で交わした初めてのキス。「君と過ごす時間が一番幸せなんだ」と囁く彼の声に、私は心の底から恋に落ちていた。 けれど秋風とともに、彼の秘密が明らかになる。そして残り少ない時間―。 「君を巻き込みたくなかった」と涙する彼に、私は決意する。最後まで一緒にいると。 限られた時間の中で深まっていく愛。文化祭で発表した「永遠の一瞬」という小説に込めた、私たちの真実の想い。 そして卒業式の朝、桜のつぼみが綻ぶ頃―。 満開の花が風にそよぎ、薄紅色の花びらがひらひらと舞い踊る。まるで新しい出会いを予感させるように、空気中を舞い踊っていた。 窓の外では桜が風に舞い、まるで祝福してくれているみたいだった。 この時はまだ知らなかった。この美しい春が、私たちにとって最初で最後の春になることを―。 愛する人を失う痛みと、それでも心に残り続ける美しい記憶。十代の純粋な恋心と切ない別れ。

秋の夕暮れ、放課後の教室で偶然の出会いが二人を結びつける。 明るく社交的でありながら、どこか秘密めいた雰囲気を持つ少年――結城日向。 落ち着いた大人びた印象を漂わせつつも、天然な一面を隠し持つ少女――藤崎美緒。 美緒がうっかり落とした「家のカギ」を日向が拾ったことをきっかけに、二人は同じ帰り道を歩き出す。夕焼けに照らされた道で交わされる何気ない会話の中、互いの心に小さな火が灯っていく。 家に帰って一人になると、日向は気づく。 自分の中に芽生えた感情――「もっと知りたい」という想い。 一方、美緒の心にもまた、彼の明るさとミステリアスさに惹かれる感情が静かに育ち始めていた。 秋が深まり、日常の中で少しずつ近づいていく二人。 これは、ありふれた季節の一日から始まる、淡くて温かな青春恋愛物語。

いつも魔法のように感じていた。

幼い頃、満開の桜の下で出会った少年との 忘れられない初恋を胸に、 高校生活をスタートさせた主人公。 そんな彼女の前に現れた転校生は、 その初恋の面影を持ちながらも、 ある秘密が……。 彼は初恋の相手なのか、 それとも偶然の出会いなのか？ 主人公の心は揺れ動く。 彼の隣にいると安らぎを感じ、心が惹かれる。 しかし、複雑な真実が、二人の関係に影を落とす。 果たして主人公は、過去の幻影を追いかけるのか、 それとも目の前の彼との未来を選ぶのか？ 桜舞う季節に始まる、甘くも切ない恋の物語。 秘密が解き明かされる時、二人の愛は、 真実の輝きを放つことができるのか？

その国は、青い桜の森に侵食されていた。 年に二回しか花を散らさない、不思議な青い桜。 その花は毒を含む白い霧を放出している為、国内は三つの区画に分断を余儀なくされている。 森の中を通り抜ける事が出来るのは、伝言局と呼ばれる組織に所属する、毒素の抗体を持った特殊な配達員達だけ。 彼らは日々、国民達の唯一の連絡ツールであるメッセージカードを届ける為に、毒の森の中を行き来している。 主人公のリグレットは、伝言局に所属する新人の特殊配達員。 周囲の人々に見守れられ、少しずつ成長していく彼女は、次第に桜の木とそれにまつわる出来事に巻き込まれていく。 ▼2025.2 人物紹介のイラストを新しくしました。 ▼2025.8 人物紹介ページに人物相関図と99話以降の一部キャラクター容姿変化絵を追加しました（ネタバレ有なので一番下に置いてます） ▼毎週金曜日の20時頃更新予定です。 ▼この話はカクヨムにも投稿しています。

春になると、なぜか足が向いてしまう場所がある。 人で賑わう桜並木ではなく、誰も訪れない空き地の片隅。 そこに咲く一本の若木が、記憶の奥にある“何か”を静かに呼び起こす。 桜の花灯りに照らされるたび、心に浮かぶのは名もなき過去。 過去と現在が静かに交差する春の夜。 桜の下で紡がれる、記憶と縁の物語。

墓場に向かう、吸血鬼さん。

『血に染まった純潔のヴェイル』は、魔法が日常に溶け込んだ世界で、すべての属性魔法を操る少女リリア・レッドヴェイルの物語です。彼女はその強大な魔力ゆえに「黄金世代」と称され、幼少期から英才教育を受けて育ちました。 リリアは、魔法の力が人を癒すこともあれば、命を奪うこともあるという現実を知りながら、日々を楽しく過ごしています。彼女の物語は、命とは何か、魔法とは何か、戦いとは何かといった深いテーマを内包しつつも、軽妙な語り口で展開されます。 物語の舞台は、リリアが通う「シルヴァリスの知林館」という魔法学校。そこで彼女は仲間たちと出会い、さまざまな試練や冒険を経験していきます。リリアの成長とともに、物語は彼女の内面や過去に迫り、彼女が抱える葛藤や使命が明らかになっていきます。 この作品は、ギャグとシリアスが絶妙に織り交ぜられたハイファンタジーであり、魔法使いとしてのリリアの成長と、彼女が直面する運命を描いた物語です。読者は、リリアの視点を通じて、魔法と命の重さについて考えさせられることでしょう。

丘の秋桜が紅葉した。

綺麗なもの、素敵なもの、優しいもの、楽しいもの。桜の木の妖精たちは、そういったものが出す小さな音色が大好きです。 ですから、お花の咲く季節は、みんな桜の花びらの色に染まります。 そんな風にして、季節の移ろいと共に、体の色を変えてゆくのです。 けれども、一人だけ透明になってしまった子がいました。 誰にも気づいてもらえなくなってしまいましたから、妖精の子は一人ぼっちになってしまいました。 『どうして、透明になってしまったのでしょうか？』 その答えは、お月さまが知っていました。 妖精の子と、お月さまが対話をする優しいお話です。

【あらすじ】 　ここは『快晴学園』というド田舎の高校。 　渋川瑛汰はそんな無名高校で憧れの先輩が所属する軽音部に入るために入学した。 　入学式が終わり、1週間後の雨の日に葉桜が咲いている木の下で瑛汰は藍原咲愛と出会い、一目惚れをしてしまう。そして、その帰り道に君の余命を知る。咲愛に告白された僕はその告白を受け入れた。 　原因不明の桜病にかかってしまった彼女は来年の桜が散るとともに身体が崩れて灰になるそうだ。その治療法が確立されていない中、瑛汰は咲愛の余命をどうにか伸ばせないかを考える。 　だが、延命方法を模索している間にも余命は刻一刻と迫っていた。次第に僕らは残りの時間を大切にしようという考えに変わる。 　そして、オリジナルMVを作ることを思いつく。瑛汰がギターボーカルを担当したオリジナル曲のイラストを咲愛が描いて、オリジナルMVを完成させるのだ。果たして、完成に間に合うのだろうか――― 　〜これは桜病にかかった君と軽音部の僕の切ない余命物語だ〜 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 【登場人物】 ・ 渋川 瑛汰(えいた)……高校1年生。軽音部。中学の時、ギターがうますぎると日本中で話題に。高校に入学して咲愛と出会う。 ・ 藍原 咲愛(さくあ)……瑛汰と同い年。帰宅部。桜灰病にかかり、来年の桜が散る時期に崩れて灰になるという。入学して間もない頃、傘を貸してくれた瑛汰に一目惚れをする。全国のコンクールに何度も入賞するほど絵が得意。美術部に入りたいが、実はある天才高校生絵師で！？ ・ 山田 王雅(おうが)……瑛汰のクラスメイト。サッカー部に所属している。学校中でイケメンと噂されている。咲愛の事が好きでアタックするも毎回、空回りしている。 ・早乙女 莉瑠(りる)……瑛汰に片思いをしている。放課後にいつも瑛汰のギターの音色を聴きに行くほど好き。 ・田中 冥逢(めいあ)……瑛汰の軽音部の唯一の同級生。ベース担当。瑛汰を慕い、いつも隣にいる。 ・天月遥歩(あゆむ)……高校３年生。軽音部の先輩。リードギター。瑛汰に魅力を感じてギタボを譲る。

　海で見つけた桜貝を、僕はそっと拾い上げた。 　妻が桜貝をそっとつつく。彼女の爪に似ている。 「また来ようね」 ◆ 海の情景を静かに書いた掌編小説です。 一話完結・約600字。

　幼い頃に両親を亡くし、祖父母に育てられた鉢嶺一希(はちみね　かずき)は、孤独の中で勉強と本だけを支えに生きてきた。 　高校二年の春。桜の下で偶然出会った少女・澪(みお)は、そんな彼の世界を一変させる。 　不器用ながらも寄り添い合い、互いの存在に少しずつ「愛」を見つけていく二人。 　だが突然、澪は姿を消した。 　残されたのは「ありがとう。ごめんね。」とだけ書かれた小さな紙切れ。 　行き場のない想いを抱えた一希は、ただ待つのではなく、彼女を探すことを決意する。 　そして二年後──東京で再び桜の季節が巡った時、彼はついに彼女と出会い直す。 　転んで膝を擦りむいた彼女に、あの日と同じようにハンカチを差し出して。 　「もう一度、やり直そう」 　孤独だった少年と、愛を教えてくれた少女が紡ぎ直す、涙と再会の青春ラブストーリー。

高校生だったあの日のこと、私は桜の下で春の光を浴びながら、自分の無力さと向き合っていた。 出会いと別れの中で、どうしても救えなかった記憶が、つららのように鋭く胸を突く。あれは正しかったのだろうか。 淡く咲く桜の一輪に目を留めながら、私は思いに耽る。 春は眩しく、冷たく、そして誰のものでもない。 まだ別れは来ない。まだ出会いは訪れない。だけど、春を求めるその執着が、私を前へと押し出す。過去の痛みと向き合いながら。

こんにちは藤咲美来（ふじさきみらい）です。 いつもお読みいただきありがとうございます。 9月4日 「動物とロボットと妖精と」 公開しました。 短編小説、読切になっています。 「パン、焼き上がりました。カレー屋さんのご長男（カレーパン）メロンの心変わり（メロンパン）ジャムの討論会（ジャムパン）いかがですか」 学校帰りに立ち寄る、小さなパン屋さん。 大きな八重桜の、木の傍のパン屋さんには、 ユニークで美味しいパンを作る動物たちと、心優しいロボット店員「八重さん」がいた。 毎日のようにパン屋さんに行く少女は、ある日の出来事をきっかけに、動物たちのことを知り、動物たちやロボットと深く関わり、笑って、泣いて、助け合っていく。 たまに見かけるおばあさん。おばあさんはいったいどこから？ 不思議な縁が紡ぐ優しいファンタジーです。 ぜひお読みいただきコメンとなどいただけると、 とても嬉しく励みになります。 今後ともよろしくお願いいたします。

世界が欲しくば天上の桜を奪い取れ 世界を死守したくば天上の桜を護り抜け 西遊記の平行世界のような場所で繰り広げられる三蔵一行、妖怪、人間、神仏の攻防。のはず、……多分……きっと……。 天上の桜は聖樹か、それとも妖樹か。神仏の思惑に翻弄される人々。 戦いなどの場面が多々入ります。残酷な描写もありますので、ストレスを感じる方もいらっしゃるかもしれません。m(__)m できる限り直接的な言葉にならないよう、あえて遠回しなわかりにくい言い方になっています。 この物語はたぶん “非なろう系”、小難しい言葉がちょくちょく出ます。 玄奘三蔵一行と言うより、神仏の方の出番が多かったりするかも。三人称です。 この話は『カクヨム』にも投稿しています。 十数年前に趣味で書いていた話を元に、つくり直しています。 この話は、絵空事、ご都合主義です。誤字脱字もあろうかと思われます。初投稿ですので色々不備もあるかと思いますが、よろしくお願いいたします。m(__)m ※亀更新です。m(__)m

小学生の達也は、田舎の神社で不思議な体験をする。 短編「サクラの木の下で」のスピンオフ作品です。

前作『vol.6』の続編にして、 全く新しい『流転の國』が始まりを告げる…！ あることがきっかけで『流転の國』から追放されてしまった女王マヤリィ。 そんな彼女を保護したのは隣国の魔術師であり伯爵家の令嬢であるシャドーレ・メアリー・レイヴンズクロフトだった。 シャドーレは本来の『流転の國』を取り戻し、かつての主人であるマヤリィを救う為、彼女の恋人であるジェイとともに行動を開始する。 水晶球の謎。封印された記憶。 現在『流転の國』の女王を務めるルーリと配下達は次第に違和感を覚えるようになってゆく。 しかし、全てが明らかになった時、マヤリィはどこにもいなかった…。

大戦末期、基地のそばで出会った少女と青年。 影を宿す彼は、空を見上げ、静かに夢を語った。 少しずつ心を通わせたふたりに訪れた、束の間の春。 けれど、彼が向かう先は――言葉にできない別れの予感をはらんでいた。 戦時下の茨城で、想いを交わした少女と青年の、静かな恋の記憶。 声にはしなかった「さよなら」が、夕暮れに染まっていく。

　悠太郎(ゆうたろう)は、海鈴(みすず)が好きだった。しかし、海鈴にとって悠太郎は単なる親友でしかないようだった。 　そんなある日、海鈴は悠太郎に何も告げないまま自殺してしまう。 　悲しみに暮れる悠太郎であったが、悠太郎は海鈴が自殺した場所がどんな場所が知りたくてその場所へ向かったとき、そこに海鈴の幽霊がいることに気づく。それからというもの、悠太郎は毎年桜が満開になると、海鈴に会いに行くようになった。 　これは、そんな悠太郎が海鈴に会いに行ったある年の話である。