イチオシレビュー一覧

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冬童話に毎年投稿されているヘカッテの迷宮シリーズの最新作です。毎年楽しみに読んでいるので、ヘカッテのことをついつい親戚のおばさんのような感覚で見てしまっています。まあまあ、こんなに大きくなって!(親戚のおばさん感)

さて本作の主人公は、先ほどもご紹介した通り魔女のヘカッテ。親元から離れて、迷宮で暮らしています。たくさんのことを勉強し、いろんなことができるようになったヘカッテはすっかり自信を持つようになっていました。それはとても良いことなのですが、ヘカッテはもう十分大人になったからと、子ども扱いされることを嫌がるようになったのです。ヘカッテは、本当にもう全部何でもできるようになっていて、お勉強なんて必要ないのでしょうか?

思春期特有の万能感については身に覚えのあるかたも多いかもしれませんね。たくさんのことを学んで成長していくヘカッテを、これからも見守りたくなる作品です。
レビュー作品ヘカッテと旅の透明人間ねこじゃ・じぇねこ完結済 / 全4エピソード童話[その他]
ほっこりとした老人と少女のチェスを通した交流の話から、急展開! じつはお爺さんの正体は……から始まる物語。

とても素敵なのです。

ヒロインはチェスが好きで得意なだけあって、とても地頭が良いのだけれど、鈍かったりでとてもかわいいです。

ヒーローは王太子、聡明だけど真面目で、自分の立場をよくわかっていた人。おせっかいな遺言状のおかげで、ふっきれ幸せを掴みにいきます。

このふたりの距離が縮まる様子が、あたたかくコミカルに描かれてます。周囲の人も素敵だし、読後感もよく面白いです。
百鬼(ナキリ)。名前を与えられる場面から、この物語は始まる。
「殺し屋を仲介する店」のビルで暮らし、日々雑用を淡々とこなしています。
同僚たちが次々と姿を消していく中で「殺されないだけマシ」と感情を捨て、常に「最善」を選びながら生き延びていきます。

生への執着と、運命に対する諦めが共存しているように思えます。この感情が作品全体を覆っているのです。
そのため唐突に始まる解体ショーの残酷さに目を背けたくなりつつも、観客と同じように目を離せなくなるのです。

そんな彼に、相棒ができ、部下ができ、彼女ができる。
けれどどこか不安定で、安心できないのです。
店という環境でしょうか。それとも、彼自身の内にある感情でしょうか。
生きたいという本能だけが彼をここまで繋ぎとめてきました。
他者を守る必要などなかった彼にとって、感情の存在はむしろ未来を不透明にしているようにも感じられます。
レビュー作品ナキリの店ゆこさん連載中 / 全29エピソードローファンタジー[ファンタジー]

物語の始まりは同僚の長野の無断欠勤から。
係長から長野の様子を見てきてほしいと頼まれた広崎は「猫は不吉」と、謎の言葉をかけられます。
会社の休みの土曜日。長野の部屋を訪ねるのですが……。

広崎の感じる違和感は特別に怖いものではなく、ひとつひとつは気のせいだと片付けてしまえるようなもの。だからこそ警戒をすることはなく、その違和感は徐々に積み重なっていきます。

広崎や長野の年齢の事情、日常の生活が丁寧に描かれています。会社の上司や先輩たちも個性のある魅力的なキャラクターです。

日常に忍び込み侵食する怪異。それは誰にも気づかれない。
はたして広崎のたどる結末とは──

これぞ怪談です! 
だれにでも起こりえる。だから恐ろしい。
Jホラーがお好きな方に全力でオススメします!
ゾワリとする空気をぜひ背筋で感じてください!
レビュー作品花柳村の猫は啼く瑞月風花完結済 / 全12エピソードホラー[文芸]
タイミング悪く、王太子殿下にビンタをかましてしまったヒロイン、もう死罪しかないと覚悟していたところ、王太子殿下からとんでもない罰を与えられてしまうことに。

ヒロインを救うためなのか、目覚めてしまった性癖を正当化するためなのか、王太子殿下のとんでもない罰がおかしくて、覚悟を決めて実行するヒロインのセリフもじわじわ来てとても面白いです。

手違いでビンタする原因となった伯爵は、王太子殿下にざまぁされるだろうなぁと匂わせられつつ、王太子殿下との両思いへの続きがあればいいなぁと思う。

そんな笑って引き込まれる話でした。
どんな罰なのかぜひ読んでみてください。
『四都物語異聞:夜語り甘味抄』、これ、ただの和風ファンタジーじゃないんです!夜にだけひっそり開く甘味処が舞台なんだけど、そこへ訪れる人たちがみんな、心に秘密とか悩みを抱えてるの。その悩みが、出てくる甘〜いスイーツを食べると、不思議と癒されちゃうんです!
 葛切りとかお餅とか、一つ一つの描写が本当に繊細で、読んでるだけでお腹が鳴りそう(笑)。物語が進むにつれて、登場人物たちが少しずつ前を向いていく姿は、自分も頑張ろうって背中を押される気分になります。
 ミステリアスな店主さんも最高で、読み終わった後もずーっと余韻に浸れる一冊。和風の世界観や、人の心に寄り添う物語が好きなら、絶対読んでみてほしい!
レビュー作品四都物語異聞:夜語り甘味抄いわたとおる短編ハイファンタジー[ファンタジー]
魔女狩り、拷問、火炙り。その他グロテスクな要素が次々に出てくる話ではあるが、読後間は爽やかという、稀有な作品だった。
残酷なモチーフを用いながらも、それに始終して世の中は残酷だ、で終わるような安易な話にはしていない。残酷な世の中でも、人の善性は燦然と輝いていると見せつける、そんな内容になっている。

善性を際立たせるために、人の悪意も盛り込んだ構造になっている。罪の無い人間を死に追いやる魔女狩りという行為には、底の無い悪意と人の欲望が渦巻いている。それも真正面から書きながら、それが善に反転する瞬間があるとすれば、それは何かを見せる。これがあるから、人の善は美しいし、世の中の全てでは無くても小さくない事を変えられるのだと信じられる。良い作品だ。
勇者パーティのメンバーであるヒロインは恋を求めていた。
しかし、いつもいつもそれを勇者に邪魔されてばかり。
堪忍袋の緒が切れたヒロインはまさかの行動に出て……!?

ヒロインのまさかの行動に驚くこと間違いないでしょう!
そして、勇者がヒロインの邪魔ばかりする理由も判明すれば思わずニヤけてしまいます。
是非最後まで読んでみることをお勧めします!
とはならないでありましょう。

おそらくではありますが……

この物語には以下の賢人の言葉を想起させられます。

人生は後ろ向きにしか理解できないが、前向きにしか生きられない。Søren Aabye Kierkegaard

人生は近くで見ると悲劇だが遠くから見れば喜劇である。Charles Chaplin

腹の立つようなことは何事であれいっさい避けたほうが賢明である。Publilius Syrus

善人が損をするのは善良だからではなく、世間を見る目が甘いからだ。Baltasar Gracián y Morales

人生の美しさを深く考える。星を見て、一緒に走っている自分を見てください。 Marcus Aurelius Antoninus

楽しさと共に安らぎを得られる物語です。
イチ推しです!
6237字の異世界恋愛です。

ヒロインは貴族令嬢のサフィリアーナ。王太子ナファスの婚約者です。

ナファスはおおらかで政略結婚としてはサフィリアーナとの関係は良好。

とサフィリアーナは思っていました。

結婚式の3時間前までは。

その時ナファスの爆弾発言が炸裂するのです。

「これから旅に出るよ! 世界中の国を見て回るのが夢だったんだ! じゃあ、あとは任せたよ」

これは新しい。婚約破棄ではないのですね。と感心している場合じゃありません。肝心の国王夫妻もサフィリアーナに丸投げ。

ならばこっちのやりたいようにやらせてもらおうじゃありませんか。サフィリアーナの手腕は冴え渡ります。そして……

自分勝手な脳内お花畑の人はもう放っておきましょう。やるべきことをきっちりやって、ヒロインは幸せになるのです。