誰かのために動いたことで、逆に怒られたり傷ついたりしてしまった経験はありませんか? 誰かに感謝してほしくてやったわけではないけれど、いっそのこと何もしなければこんな惨めな思いをしなくて済んだのにと落ち込むことだってあるでしょう。
この作品の主人公は、一枚の黒いスカーフです。出来上がったばかりのぴかぴかのスカーフは、一人前になるために外の世界を見に行くことになりました。黒いスカーフは外の世界で、一体どのような出会いをするのでしょうか。
美しいもの、素晴らしいものだけが自分を作るのではありません。痛みも汚れも私たちを作っていく大切な一部となるのでしょう。誰かを思いやる心の美しさと、傷つきながらも大きく成長していく姿に、思わず涙が出そうになってしまう優しい物語です。