魔女狩り、拷問、火炙り。その他グロテスクな要素が次々に出てくる話ではあるが、読後間は爽やかという、稀有な作品だった。
残酷なモチーフを用いながらも、それに始終して世の中は残酷だ、で終わるような安易な話にはしていない。残酷な世の中でも、人の善性は燦然と輝いていると見せつける、そんな内容になっている。
善性を際立たせるために、人の悪意も盛り込んだ構造になっている。罪の無い人間を死に追いやる魔女狩りという行為には、底の無い悪意と人の欲望が渦巻いている。それも真正面から書きながら、それが善に反転する瞬間があるとすれば、それは何かを見せる。これがあるから、人の善は美しいし、世の中の全てでは無くても小さくない事を変えられるのだと信じられる。良い作品だ。