百鬼(ナキリ)。名前を与えられる場面から、この物語は始まる。
「殺し屋を仲介する店」のビルで暮らし、日々雑用を淡々とこなしています。
同僚たちが次々と姿を消していく中で「殺されないだけマシ」と感情を捨て、常に「最善」を選びながら生き延びていきます。
生への執着と、運命に対する諦めが共存しているように思えます。この感情が作品全体を覆っているのです。
そのため唐突に始まる解体ショーの残酷さに目を背けたくなりつつも、観客と同じように目を離せなくなるのです。
そんな彼に、相棒ができ、部下ができ、彼女ができる。
けれどどこか不安定で、安心できないのです。
店という環境でしょうか。それとも、彼自身の内にある感情でしょうか。
生きたいという本能だけが彼をここまで繋ぎとめてきました。
他者を守る必要などなかった彼にとって、感情の存在はむしろ未来を不透明にしているようにも感じられます。