この物語の主人公は報われたのだろうか。最初の一行を読んだときふと思った。死を望まなければならない状況、「ごめんね」という声。そして大勢の人の沢山の泣き声。どれも暗く、重く、そして悲しい。
毒を甘いと表現しているのはきっと主人公の死に対する期待ではないかと私は思った。けれどその期待は応えられることもなく、ただ淡々と死を待つだけとなり、それ故周りを悲しませているのではと深く考えてしまう。それでも、最後は甘い味を味わうことが、死ぬことができたことでやはり主人公は報われたのだなと最後の一行と後書きを読んだとき冒頭の解釈は覆された。
さて、最後に、これは死を甘美に彩った現代社会への風刺と私は思いつつレビューを締めくくろうと思う。
願わくは、私におとずれる毒も甘くあってほしい。そうあってほしい。