自衛隊が別の世界で活躍する。モチーフは昔からあります。
現代人の価値観や倫理観が、全く異なる世界の弱肉強食の掟とぶつかったときにどうなるか? 知識や価値観は、一面では有利に働き、別の面では不利に働きます。
早期に資源問題が解決するなど、ご都合主義と言われる場面もありますが、読みたいのは異文化衝突。その辺をつっこむというのは野暮というもの。
架空戦記物を書きたい人にありがちですが、司馬遼太郎や、あるいは田中芳樹を意識した文体なのに、ディティールやデータを羅列して、読者を興ざめさせる作品もあります。
この作品は、それらに比べられる文章力ではありません。しかし、過剰なディティールをばっさり捨てたことが、良い方向に回っています。マンガで言うなら、緻密な絵は描けないけど、構成と構図で勝負する作品、と喩えたくなるでしょうか。
読みたいとこだけ読ませてくれる、そんな架空戦記です。