目の不自由な女性視点で始まる物語。次に登場するのは、声を発せない男性。二人のやりとりは、手のひらを使った、筆談。
作品のタイトルも相まって、やはりどこか、重い空気のまま進んでいくお話し。そして、女性視点の前半を、言い知れぬ不安感と、じわじわと押し寄せる重い感覚が、支配していきます。
ところが後半の、男性視点になると、確かに先程までと同じ空気感のはずなのに、気持ちは、不思議な浮上を始めます。
絶対に無くならないはずの、やるせなさや不安を、ラストシーンまで、ゆっくり、丁寧に、主人公ふたりの、相手を思いやる気持ちが、厚く包んでいく……。
最後に、全てがひとつになった、言いしれない感動が出来上がります。
是非お読み下さい。ふたりが織り成した感動は、必ず心を満たしてくれると思います。