ピシナムというファッションホテルでの過去語り。
直接触れることのないホテル従業員の磯辺と客の女子高校生R。
ピシナムでは客と距離を保つため、必要以上の関わりを持たない。顔を見せず、言葉も交わさず、ただ鍵の受け渡しだけをする関係の二人。ある日、二人は気送管での文通を始める。
その文通は二人がお互いを知り、考え、心を通わせる機会を与える。
その中で次第にRの不純な行為、奇妙な言動の意味が明らかになっていく。だけど二人の心の距離は一五一四キロメートルよりもきっと遠い。
3月11日の自分は磯辺と同じでした。モニター越しに見る凄惨な光景に心を痛めるフリをしながら、どこか他人事で。
そんな自分自身を知って心苦しく、そんな事を思うのさえ自分の為ではないかと感じさせられた苦笑い思い出。
これを読むあなたは磯辺側か女子高生R側なのか。
ぜひ一度この作品を読まれて感じてください。