予定にないのに、三途の川を訪れた人間について描いた、連作シリーズの5作目。
三途の川の渡船会社社員のエフ氏の下に、1人の男がやってきた。来たのは某社の人事部長『日比野幸三』。退職者を必ず見送る彼のあだ名は“お見送り部長”だ。
彼の死因は過労死。折からの疲労と、退職を希望する部下『鈴木』との面談中に「退職理由は部長だ」と言われたことで、倒れてしまったのだ。
エフ氏と、霊体となった日比野氏の目の前では、日比野氏本人の葬儀が行われている。閑散とした葬儀場で祭壇に手を合わせるのは、原因を作った鈴木君。それを見た日比野氏は、声を枯らして叫び出す。
鈴木君へ向けた日比野氏の、文字通り“魂の叫び”を。
鈴木君が語る、面談で語られなかった退職の理由を。
それを聞いた日比野氏が語った言葉を。
みなさんの、その目で、その心で、確かめていただきたい。魂の込もった言葉の数々を、そして、その結末を。