幾多ある著作の中で私が最も惹かれたのが、この短編
線香、黒電話、昭和、畳張りの小さな仏間……
冒頭から羅列される純日本的な情景
しかし、想起するのは中南米諸国に代表される幻想文学
彼の国に狂い咲く、摩訶不思議な短編群
実在する村がごっそり滅び、空き地になるという設定
ガルシア・マルケスの「百年の孤独」をやはり連想させます
言うまでもなく、作中の「禁書」は此岸と彼岸の基点
そして、この短編に触れる読者も例外なくこの心象風景において著者と対峙する二重構造
……のはずなのですが、今回に限ってはむしろ著者が自身を心象風景に封じようとしている様な、不思議な円還的構造を錯覚しました。私自身がゆめぜっとさんと多少の交流を持っているせいでしょうか
書き手と作品の間を繋ぐ絶望的に分かち難い繁属を思わずにはいられない、霊妙な一編
こんな作品と相見える機会は極めて稀につき、重畳なる時間に感謝の言葉を