冒頭から、滔々としたモノローグで列挙される、自己の不必要性
具体的な数値がふんだんに盛り込まれた言葉の群れには「これでもか」というくらい容赦がない
そして、ほろ酔い状態で臨む「黒ぶちさん」との対話
さながら、チェックシートに一つ一つレ点を刻んでいくかの如く、自らを袋小路へと追い立てるプロセスを追体験しました
核家族化、晩婚化が遙か昔にデファクトスタンダードとなった時勢、主人公が抱く感覚に読者の多くも後ろめたい親近感を抱くはず
煩雑な日常を言い訳に目を背けている、自分の臓腑を眼前に開帳される醜穢さ
文体としてはむしろ読み易く、「黒ぶちさん」との会話も軽妙なだけに、根底に堆積した生温い諦観がより一層不気味に感じられました
かと言って、後味が悪いわけでもなく
この不可思議な掌編、読まずに見過ごす手はないでしょう