日常の中に妖が混じる不思議な世界。彼らは確かにここにいるのに、その姿は人の姿に溶け込んでいて、少しばかり見ただけでは誰も気がつかない。
人であれ、妖であれ、そして彼らが望む望まぬに関わらず、世間というものは端的に区別する。大多数の人と異なる、それだけでこの世の中は思った以上に息苦しい。
美しく優しい心を持っていながら、ただその「出自」ゆえに恋をするのに臆病になった青年。彼は傷ついたいくつかの経験の末に、強く求める相手であればこそ、二者択一の選択を突きつけるようになる。
どこかそっけない態度を取り続ける女性。彼女は誰にも言えない秘密を抱え、けれど誰にも悟らせることなく静かに前を向いて生きている。
物語の結末に、あなたは穏やかな幸せを噛みしめることになるだろう。相手の痛みも弱さもすべて受け入れられるのは、傷ついた経験を持つ大人だからこそ。甘くそれでいて爽やかな清々しい恋物語である。