本作の原典は、16世紀のイタリア叙事詩『狂えるオルランド』。
悪魔の宿る魔本に囚われの身となった司藤アイは、ブラダマンテを演じてハッピーエンドを迎えなければ、無事に現世に帰還できない。
アイは、本の内容を知っている男、下田教授と念話で会話できることや、結ばれる相手方――ロジェロに憑依しているのが、憧れの先輩であることもあって、恋する乙女パワー全開で邁進するのだが……。
そうは問屋が卸さないのが、この魔本の恐ろしいところ。
物語の未来や秘密を知っているという『最強のチート』に対し、本の悪魔は最悪な『罠』を用意していた。
その『罠』によって、物語は微妙に道筋を変え、アイの運命とその恋路を翻弄していく。
ルネサンス叙事詩を、現代の感性で内側から斬り込んでいく手法は、ルネサンスを新たに『文芸復興』させているようで、とても小気味よい。
新たなる文芸復興に是非触れてみて欲しい!