賛否両論のある作品であると言える。
おそらく作者は『源氏物語』の手法を用いてこの作品を書こうとしているのではないか。そんな感想すら持つ。
作品自体はとてもあっさりしている。一話ごとの文字数も読みやすく工夫されており、物語を端的に構成する文章力は相当にレベルの高い作品と言える。
ただそれだけに、かなりの部分を読者が補完しながら読まねばならない。想像力の乏しい者や、文間の読めない者にとってはストレスを感じる作品だろう。
一方で、こうした点が気にならない読者には、書を置くこと能わぬ、知的好奇心を刺激して止まぬ作品になるだろう。
高学歴で高い教養を持つ者や、小説などを読み込んだ大人の読者に対してはその魅力は伝わるだろうが、読めぬ読者や、小説を読み始めた者への配慮に欠ける点も少々見られる。このままでも十分に面白く、書籍化が待ち遠しくはあるが、今少し説明的な作品にしても良いように思う。