こじんまりとした、チェーン展開された居酒屋ではない、ちょっと粋な居酒屋。
独り身で、呑兵衛で、酒や食事にちょっとだけうるさくて。
何より、『ほんのちょっとのお節介と無関心を、その場に応じて使い分けてくれる、日常の延長にある非日常スペース』を求めている人間ならば。
行きつけの飲み屋、というのを持っていたりするのではないだろうか。
行きつけ、とまで言い切らずとも、フラリとつい足が伸びてしまう。
そんな店を。
主人公は自然にカウンターの席につくくらい、馴染みの客だ。
そこで交わされる会話、カウンターの様子。
酒飲みには見慣れた景色や匂い、温度がありありと頭に浮かぶだろうし、馴染みのない人間もまた、ドラマや映画のワンシーンとして、日常を少し幻想的に彩った様子で浮かぶだろう。
こういった舞台で期待されるのは、人情噺だ。
そしてそれは裏切られない。
温かく、切なく。
冬の人情噺。
いいものだ。