あなたがあなたらしく存在するということは、果たして何を意味するのだろうか。
例えばいきなり家と仕事を奪われ、見たこともない服装や食事を新たな生活習慣として強要されたとしたら、それはあなたらしく生きていると言えるのか。
いつの時代においても文化の衝突の中で、人は互いに傷つけあう。本作の少女もまた、そんな哀しい犠牲者の一人だ。
その少女は囚われの身である。けれど籠の中の鳥であるにもかかわらず、彼女の瞳は強く気高く、決して野生を忘れなかった。その瞳に魅入られた少年は、遥か未来を想い決意する。彼女の隣で羽ばたく自由をその手で掴むために。
二人の間にあるのは、単なる恋の甘さではない。どうしようもない環境でがんじがらめになりつつも、決して己の誇りと信条を捨てないひたむきさだ。彼らの行く道は、穏やかで平坦なものばかりではないだろう。それでもなお進むその姿に、きっと私たちは一つの幸福の形を知るのだ。