なぜ人は、誰かに秘密を語るのだろう。
誰かと共有すれば、それが露見する可能性は高くなるというのに、甘美な誘惑に誰もが負けてしまう。恐らく秘密というものには、実体があるに違いない。いつの間にやらその体積を増して膨れ上がり、崩れ落ちそうなほどの質量を持つ。だからこそ人は、その重荷を誰かに預けたくて秘密をそっと分け与えるのだ。
とある時代の思い出について語る老人と、その話に耳を傾ける女子学生。それは穏やかな、きっとあなたの隣でも見かけることができる日常。けれど老人の語る思い出の歪さに彼女が気付いた時、物語は急展開する。本当に怖いのは、人々の不安を掻き立てる幽霊という奇妙な存在か。それとも「時代」を免罪符として、欲望と狂気をむき出しにする人間の方か。
結末を迎えたとき、あなたはきっと言葉をなくすはずだ。
なんと人は罪深く、業の深い生き物であることか。そして私たちもまたそんな人間の一人なのだ。