渡り廊下を走ったローティーンの記憶は、繋がれつづけることなく今日の日を迎えていた。
初恋だったこの人の、同じ歳になる少女の背中を眺める参観日。蘇るは透けるシャツからのぞく一筋の線。思春期とはよく言ったもので、英語ではそれを puberty というが、これはどちらかというと肉体的な成長を示す。ドキンとし、なにもないはずの刻々と流れる時間に、高鳴るか高鳴らないかの僅かな熱に想いは全身を駆け巡る。知恵熱のようにすっと引くはずのこの瞬間が、しかししっかり残る渡り廊下の記憶とともにもう一度開かれた。
大切にしまっていた引き出しの、宝物を確認して、そしてまたそっとしまう。鍵はかけるか、かけないか。きっとかけはしないんだけど、それでもそれは、そっと大学ノートで隠すんだ。