真冬の登山中に遭難し、食糧も尽き、このままでは誰一人生き残れぬ状況であったから、怪我をして足手まといになった人間を喰らって生き延びた。
昔、そんな事件だか都市伝説だかを聞いた覚えがあります。
このお話は上記の都市伝説の様に『とある極限的状況に置かれた場合人間は何処まで他者に冷酷になれるのか』言い換えるならば、自分が生き延びる為ならば何処まで他社を犠牲に出来るのかを精緻に描いていると思います。
生きる為他者を手にかける事に対する迷い・苦悩・葛藤、それらの全てが見事に描ききられており、読んでいる者にも、まるで今自分が同じ状況におかれている様な、そんな錯覚を与えます。
今の日本は法治国家である為、法律が殺人を禁止している以上、殺人を犯せば罪になります。
しかし、では、法律の光もささない極限に置かれた時、自分ならばどの様な行為をとるのか。
色々考えさせられる作品でした。